お知らせ
SAiN
2025/09/30
【Featuring SAiN86[施主様からの特別寄稿]四季めぐる空気がうまい家】お洒落な照明って、新しいの? ~超簡単な照明で、リビングを楽しむ~

今年の夏も、とても暑く、時折、身の危険を感じるような日もありました。
けれども、こうした日々だからこそ楽しめるものもあります。
それが、「かき氷」。
先日は、近所の子ども達と大人が集まって、「夏祭り」という名目で、宴会を楽しみました。
子ども達も参加するということで、美味しいかき氷を準備することに。
「かき氷って、氷を細かくして、シロップかけるだけじゃない?」
こんなことを子ども達に言われたのですが、そう単純な話ではありません。
①質の良い氷(透明で空気が入っていないもの)
②切れ味の良い刃
これらが揃って、初めてかき氷の本体となる部分が、ふんわり仕上がります。
そこで、早朝から、氷屋さんに出かけ、機械の刃を研いで、夜に備えました。
ちょっとしたことだけれども、こうしたことに拘ることが楽しいと感じるのも日本文化の一つじゃないかなぁと、最近思います。
整理整頓を徹底した結果
我が家は、ここ一年くらいかけて、断捨離のようなことを意識してきました。
本来、「断捨離」というのは、「断行・捨行・離行」と言って、物に対する執着を無くすことによって、心の執着も無くし、生活を整えるという目的があるようですが、私の場合は、単純に
「物が少ないとスッキリ暮らせるかなぁ。」
というくらいの感覚で、物を減らしていきました。
幸いにも、こうして「物を減らす」という行為は、私にとって、楽しいものでした。
稀に
「我が家では使わないけれども、まだまだ使えるなぁ」
と心が痛むこともありましたが、フリマアプリを活用することで、心の傷みは解消することができ、ゆっくりとですが、スッキリした暮らしに近づいていきました。
ただ、このスッキリ感が、あまりにも心地よく、どんどん、物を減らすことが加速した結果、生活感がほぼないくらいになってしまいました。
スッキリしたのはいいけれども…
「めっちゃ、綺麗だけど、やりすぎじゃない?」
家族や遊びに来た人にもこう言われ、スッキリしているけれども、暖かみも十分感じられるようにするには、どうしたらいいんだろう・・・。
こんなことを考えていた時に、SNSで、
「ここには、最近人気のお洒落な間接照明をつけて、和みが感じられるようにしました。」
と解説している動画に出会ったのです。
確かに、最近、間接照明を取り入れた家が随分多くなってきている様にも感じます。
「じゃあ、試しに一つ作ってみよう。」
ということで、
①構造が簡単であること。
②雰囲気が良く、和みが感じられること。
これらを意識して、どんな形にすればいいのか、いろいろ考えることに。
ただ、この時に、疑問に感じたことは、
「何で、人は間接照明に和みを感じるのだろう。」
ということだったのです。
これって、本当に新しいって言えるの?
真夏のいい天気の日の直射日光は、大変暑く、日によっては、肌が焦げ付くような感覚にもなります。
そうした感覚は、身の安全を確保するために感じるもので、本能的に直射日光を避けようとします。
その結果として、「軒」がしっかりとある家を作り、「よしず」なんかも活用してきました。

お出かけの際にも、「日傘」や「帽子」を使ってきました。
特に驚いたのは、「日傘」が古代エジプト時代(紀元前四千年頃)から使われていたということです。
つまり、私たちは何千年もの間、直射日光を避ける工夫をしながら生きてきたのです。
では、炎や電気を使った灯りについてはどうでしょうか。
まだ電気が使えなかったころの灯りは、「行灯(あんどん)」が使われていました。
菜種油などを燃料としたもので、その油に灯芯を浸して火をつけていたようです。
そして、着火した火が風で簡単に消えないように、周りを障子紙で囲ったようです。

その後、電灯の時代がやってきます。
明治時代の頃から白熱電球と呼ばれるものが次第に使われるようになりましたが、透明なガラスに覆われた電球だと、光が広がりすぎたり眩しく感じられたりすることもあったため、それらを抑えるために、後に乳白色のガラスが使われるようになりました。

こうして、灯りというものを改めてみると、一見、新しく、流行りのようにも感じられる間接照明ですが、本当は、長い人類の歴史が詰まっているように思います。
特に、古くから障子越しに入ってくる光と付き合ってきた私たちは、間接的な光に深い和みを感じるのもかもしれません。
誰の作品だったか、すっかり忘れてしまいましたが、
明かり消す障子に月の光さし
こんな俳句も思い出しました。
私の様に本当に間接照明を設置しなくても、この俳句から風景を想像するだけでも、和みが感じられるのも不思議なものだなぁと思います。
最初に掲載した写真の間接照明が意外と良く、調子に乗って、二つ目も作ってみましたが、残念ながら、納得感が得られませんでした。
なんだか、味わい深い光を家に取り入れる難しさと、かき氷の氷を細かく、ふわっと仕上げることと、どこか似ているようにも感じた夏でした。

京都府宇治市 渋谷浩一郎
◎渋谷さんの自然についてのコラムは下記でもお読みいただけます
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