SAiN 50 ANNIVERSARY MESSAGE

#2 続・たまにはゆっくりあるいてみよう

 50回の発刊の中で、これまでたくさんのコラムを綴らせていただきましたが、その中でも一番印象深く残っているのが、2006年3月に発刊した第8号に掲載した文章です。

 以下がその時の原文です。

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 「たまにはゆっくりあるいてみよう」

 私は昨年(2005年当時)の9月初旬から中旬にかけて、空海(弘法大師)の史跡で有名な「四国八十八か所巡り」の旅に行って参りました。動機は色々あるのですが、まずは序盤の一番札所~十八番札所までを歩き、自分自身を見つめ直す良い機会になったと思っております。

 日頃は車、電車、飛行機などを利用しながら全国各地を訪問。過密なスケジュールを消化するために、全力を投じています。各地のお取引先の皆様と面会したり、セミナーや講演会、勉強会を行ったり、たくさんの仕事をこなすことで、ある意味そこで気持ちが満足してしまっていたのかもしれません。四国の道を歩くことで、自分自身の人間の小さい部分を新たに発見できたような気がいたします。

 私が一日に歩ける距離はせいぜい20km~25km。同じ距離を移動するのに、車を使えば30分弱、飛行機だとわずか数分です。それだけ人間一人が一日に歩ける距離は、乗り物に比べて圧倒的に短いことが分かります。しかし逆に速度がゆっくりな分だけ、周りを落ち着いて観察できるという新鮮さがあります。

 普段忙しく働いていてはなかなか見えないもの。例えば、道端に育っている小さな草花が一生懸命に花を咲かせている風景。とても小さいアリが忙しそうに走り回っている様子。川のせせらぎや小鳥の鳴き声。自然の中に身を置き、自分自身と向き合うことで、今まで過ごしてきた53年間が走馬灯のように思い出されました。ただただ突っ走ってきた人生。お客様に助けられ、家族を犠牲にし、自分の自己満足だけの人生だったように思えました。事業に対しても私のやっている事がとても小さなことに感じ、千年以上も昔、道路も通信手段もない時代に大事業を成し遂げられた大師の偉大さを痛感いたしました。

 大師は高野山の開山や四国八十八か所札所など、全国各地にそのゆかりの地が存在します。この現代においてさえも大師が残された事業によって得られた恩恵は大きく、多くの人々の生活が支えられているのです。あの時代にこのような大事業を成し遂げることが出来たのは、大師の心(哲学)の素晴らしさに周りの人々が理解と納得を示し、事業遂行に全面協力されたからに他なりません。

 私も住宅の健康を願い、健康素材の生産と販売を行っているメーカーの経営者として、より一層自分を磨き、お取引の皆様方を始め、ユーザーの皆様のご理解を得て、一人でも多くの方々に安全で健康な生活を楽しんでいただけるよう、決意を新たにいたしました。

 たまにはゆっくり歩いてみましょう。

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 この原稿を書いたのが、今から約12年前のことです。その約3年後、5日間程時間を作り、二十九番札所(国分寺)から三十六番札所(青龍寺)までを回りました。まだ半分にも到達しておらず、気持ちははやるのですが、何分相変わらずの仕事状況。こんなことでは大師にお叱りを受けてしまうかもしれません。

 12月5日で65歳を迎えました。この12年間に大きな手術を経験しました。事故にも遭いました。今満足に動けている現状、つくづく生かされていると実感します。

 果たして過去と現在を比べて、私自身がどんな成長をしたのか、それとも停滞したままなのか、再度遍路さんになり、自然と一体になることで、今後の人生をもう一度見つめ直してみたいと心から思う次第です。

 今だからこそ改めて思う・・・

 たまにはゆっくり歩いてみよう。

[#3に続きます]

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