秋の花 [菊]

皇室の紋章であり、パスポートにもデザインされていたりして、桜と並んで日本の象徴的な花といえる「菊」。
菊は茎が枝分かれしていくつも花を咲かせる「スプレータイプ」と、一本の茎に一輪の花が咲く「ディスバッドタイプ」に大別されますが、ディスバッドタイプも元々はスプレータイプで、栽培する際に茎の葉の付け根から出る「わき芽」を取り除いて、より大きな一輪の花に仕立てられたものです。

菊は咲き方で呼び名が区別されることが多く、大輪で花びらが何層にも重なり詰まっている「デコラ咲き」、こんもりと半球状になる「ポンポン咲き」、ポンポン咲きをより球形にした「ピンポン咲き」、細い花びらが蜘蛛の巣のように広がる「スパイダー咲き」、花びらが一重で花の中心(花芯)が見える「シングル咲き」、花びらが八重で花芯が盛り上がっている「アネモネ咲き」などがあります。

菊はお供えにする「仏花(ぶっか)」など和のイメージが強いかもしれませんが、近年では日本から海外に伝わり逆輸入された「マム(※)」と呼ばれる洋菊なども含めて品種改良が盛んに進み色も豊富になっていて、特にアンティークカラーなど絶妙な色の菊が増え、現代的アレンジや花束、ウエディングブーケなど幅広く使われています。
この秋は、初めて見る菊を飾って、暮らしの新しい彩りを楽しまれてみてください。
※マム … 菊の学名「Chrysanthemum:クリサンセマム」の略称にちなんだ主に欧米で品種改良された洋菊の総称

OMOYA Flower Arrangement #02 [菊]

多様な器で多彩な菊をアレンジ

今回は、さまざまな「うつわ」を「花器」にして、いろいろな咲き方の菊のアレンジを楽しんでみたいと思います。

<水差し>(写真右)
◎菊(スプレータイプ/デコラ咲き)… 1本
◎菊(スプレータイプ/ポンポン咲き)… 1本
◎金水引(キンミズヒキ)… 1本

<蕎麦猪口>(写真中央)
◎菊(ディスバッドタイプ/デコラ咲き)… 2本
◎藤袴(フジバカマ:秋の七草の一つです)… 1本

<小鉢>(写真左)
◎菊(スプレータイプ/ポンポン咲き)… 1本
◎菊(スプレータイプ/デコラ咲き)… 1本
◎女郎花(オミナエシ:秋の七草の一つです)… 1本

ほかにも、マグカップ、グラス、お茶碗など、お気に入りのうつわを花器にして、ご自由に楽しまれてみてください。

◎菊を選ぶときは「葉っぱ」がポイント
菊の鮮度や水が上がっているかどうかは「葉っぱ」に表れます。
<良い状態>
・葉っぱが「新鮮な春菊(※)」のようにシャキッとしていてハリがある
※春菊もキク科なので菊の葉とよく似ています
<悪い状態>
・葉っぱがしんなりしている
・葉っぱが茶色く傷んでいる

アレンジのポイント

茎のカット

茎をカットする長さは、実際に生ける器の横に添えて確認すると、切り過ぎを防ぐことができます。

はじめは少し長めにカットして、器に入れてバランスを確認しながら、少しずつカットして調整していく方法がおすすめです。

茎のカットは、ハサミでカットしても手で折ってもOKですが、菊は金属との相性があまり良くないため、手で折る方法をおすすめします。

「水差し」に生ける

「水差し」は、花瓶やグラスなどと同じように生けられる、使いやすい器です。

水差しに付いている取手や注ぎ口がデザイン的なアクセントになりますので、少ない本数でも見映えよく仕上がります。

菊の長さは、生ける水差しの高さの1.5倍くらいの長さでカットすると、バランスが良くなります。

あまり多くの本数を生けるのではなく、少ない種類でシンプルに、すっきりした仕上げをおすすめします。

「蕎麦猪口」に生ける

今回、蕎麦猪口に生ける菊は、一本の茎に一輪の花が咲くディスバッドタイプの中でも大輪の「デコラ咲き」をセレクトしてみました。

大きなサイズの菊を小さな器に生けるときは、低く短めに生けるとバランスが良くなります。
菊の長さは、花が器の縁に乗るくらいにして、2本とも同じ長さにします。

2本の菊が安定するように、茎が器の中で交差するように生けましょう。

菊を生けたあとで、菊よりも頭ひとつ分ほど長くした草花(今回は藤袴)を加えると、立体感が出てより見映え良く仕上がります。

「小鉢」に生ける

小鉢やお椀など底が浅く丸い器は、生けたお花のバランスを取るのが難しいため、茎が枝分かれしているスプレータイプの菊を選んでいます。
スプレータイプは複数の茎が器の中でお互いに支え合うので、小鉢やお椀などにも生けやすくなります。

底が浅い器に生けたときは、茎が水に浮いてしまう状態になることがありますので、水の量に注意しておいてください。

今回は、スプレー咲きの菊の中で花型が違う「ポンポン咲き」と「デコラ咲き」の同系色を使ってアレンジ。
2本の菊を交差するように生け、間に草花(今回は女郎花)を添えて仕上げます。

「隠逸花(いんいつか)」、「星見草(ほしみぐさ)」、「霜見草(しもみぐさ)」・・・
そんな別名もある新しい菊を飾って、はじめての秋を見つけてください。

フラワーデザイン  阿部 すみか

福岡県福岡市出身。専門学校にてフラワーデザインを学んだのち、株式会社日比谷花壇に入社、ショップやウエディングの経験を積む。
2023年に独立 し、その年の立冬に「まどろみ」オープン。
https://madoromi2023.theshop.jp

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