公開日:
最終更新日: 2025年11月18日
生きた木を生きた土へ〜農と音響熟成木材 <生きている土づくり編>
カイケンコーポレーションの季刊フリーペーパー『SAiN(サイン)』2025年秋86号の特集でご紹介した、鹿児島県姶良郡湧水町でオーガニックな農業に取り組まれている花光農園さん。
「土は生きている」が合言葉の花光農園さんの「農」には、「自然が本来持っている力を引き出す」という、私たちカイケンコーポレーションと同じ考え方があって、「土」、「微生物・菌」、「炭素」など、奥深い自然の働きが生かされています。
この「Natural Link Navi」では、SAiNでは紹介しきれなかったテーマを深掘りして、花光農園さんの「農」と自然のかかわりをご紹介していきます。
まずは、花光農園さんの美味しい野菜の源である「生きた土」についてです。
この記事でわかること
そもそも「土」とは?
土の種類
微生物・菌が土を生かす
オーガニックな野菜づくりで大切なこと
目次
そもそも「土」とは?

土の公式
農薬や化学肥料はもちろん、動物性の堆肥さえも使わない花光農園さんの「農」。
植物性の天然資源だけで「生きている土の力」を引き出していく農法の探求は、「そもそも土って何だろう?」というところから始まりました。
「土」=「土壌」とは、シンプルにいうと「岩石が分解したもの」と「動植物が死んだもの」が混ぜ合わさったものです。
地球の岩石が、太陽の熱や雨風など自然の作用で風化して細かく砕かれて、砂や粘土になります。
そこに動植物の死骸が積み重なり、さらにそれが微生物や菌類によって分解され、多様な鉱物と有機物が混ざり合って「土」になっていきます。
「風化」というと、劣化や消失といったマイナスのイメージがあるかもしれませんが、見方を変えると「土を生み出す現象」でもあります。
公式にすると、「土」=「岩石が風化した砂や粘土」+「動植物の死がい」×「微生物・菌類の働き」というところでしょうか。
ちなみに、岩石が土になるプロセスには数百年から数百万年かかることもあるそうで、地球上に最初に土ができたのは約5億年前といわれています。
環境が生み出す土の種類
「風土」という言葉があります。
「風土」は、その土地の自然環境そのものを意味するだけでなく、その地の自然環境と密接に結びついて育まれ、そこに根付いた文化・価値観・習慣なども含んだ、広くて深い概念を持った言葉です。
風土と同じように「土」も、その土地ごとの自然環境によって変わります。
「土壌学の父」と呼ばれるロシアのドクチャーエフ(1846〜1903)は、①岩石(地質) ②地形 ③気候 ④生物 ⑤時間という5つの環境条件によって土が変化することを発見しました。
花光農園さんも大いに参考にされたという、土の研究者・藤井一至(ふじいかずみち)さんの著書『土 地球最後のナゾ(光文社新書)』では、アメリカ農務省の土壌分類にもとづいて、地球の土を12種類に分けています。
土の「色」は、腐食、砂、粘土の量やバランスによって決まります。
腐食は黒色、砂は白色、粘土は黄色や赤色で、土を大まかに分けると、黒い土が3つ、赤い土が1つ、黄色い土が1つ、白い土が2つ、茶色い土が1つで、そのほかに凍った土が1つ、水浸しの土が1つ、乾いた土が1つ、特徴のない土が1つで、以下のように分類されています。
12種類の土
- 黒ぼく土(くろぼくど):火山灰を起源とする肥沃な「腐葉土」を形成する黒い土で、日本で特徴的な土壌
- ひび割れ粘土質土壌:日本の水田土壌など、乾燥によってひび割れが生じる粘土質の土壌
- 強風化赤黄色土(きょうふうかせきおうしょくど):アジアの熱帯林や日本などに分布する、風化が進んで有機物が少ない酸性が強い土壌
- 若手土壌:土壌の層位分化が未熟な若い土壌で、腐植や粘土の含量は低いが排水性が良い(日本の山地や丘陵地に広く分布する褐色森林土もこの土壌)
- 粘土集積土壌:粘土が積み重なって形成される土壌
- 未熟土:形成されて間もない未発達の土壌
- チェルノーゼム:ウクライナなどを中心に分布する黒い土で、世界で最も肥沃な土壌のひとつ
- ポドゾル:ブルーベリーなどの栽培に適する主に北欧に多い土壌
- オキシソル:熱帯地方に見られる高度に風化した土壌
- 砂漠土:ナツメヤシなどの栽培に適する降水量が少ない乾燥地帯に分布する土壌
- 泥炭土:「ピート」や「草炭」とも呼ばれる、湿地などで植物が十分に分解されないままできた、有機物を多く含む土壌
- 永久凍土:シベリア、アラスカ、高山地帯などに広く分布する、一年を通して凍結している土壌


土を生かす微生物・菌類

微生物・菌類の働き
スプーン1杯(5グラム)の土壌には、およそ50億個もの細菌(バクテリア)が生きています。
カビやキノコなどの菌類は、5グラムの土の中に約10kmもの菌糸を張り巡らせています。
この無数の微生物・菌類によって、土に命が吹き込まれます。
土を生かすため、花光農園さんが力をかりているのが、米糠(こめぬか)や籾殻燻炭(もみがらくんたん:米のもみ殻をいぶし焼きにして炭化させたもの)です。
土に米ぬかやもみ殻を撒(ま)くと、栄養が豊富な米ぬかが土の中の微生物の働きを活発にし、もみ殻を分解する発酵を促進して土壌改良が効果的に進み、土壌の水はけがよくなり、保水性や通気性なども改善されて、ふかふかの土になります。


<米ぬかの特長>
- 豊富な栄養素:ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれる
- 野菜の三大栄養素を含む:窒素、リン、カリウムもバランスよく含まれる
- 微生物の活性化で土がふかふかに:豊富な栄養素が土の中の微生物の働きを活発にし、土の粒子が集まって団子状になる「団粒構造」が形成され、土がふかふかになる
<もみ殻の特長>
- 通気性・排水性の向上:籾殻独特の形状が土の間に隙間を作り、土が固くなるのを防ぎ、水はけが良くなる
- 保水性の向上:籾殻が水分を保持するため、乾燥を防ぎ、土壌の水分量を安定させる
- 地温の安定: 籾殻が断熱材のような役割をして土壌の温度変化を穏やかにする
- 有機物の供給:籾殻がゆっくりと分解されることで有機物を供給し、土壌を豊かにする
- 微生物の住処: 籾殻を炭にした「燻炭」には無数の微細な穴があり、微生物の住処になる

「生きている土」から生まれる「生きている野菜」


野菜が気持ちよく育ってくれるために
花光農園さんが野菜づくりで大切にされているのは、「土が育ててくれる」というスタンス。
「土」という「土壌」で、雨・風・太陽・月・虫・微生物・菌など、地球のバイオリズにもとづくさまざまな要因がつながりあって、野菜が育ちます。
野菜たちが気持ちよく育ってくれるためのコミュニケーションとサポートをしていくことが、花光農園さんの「農」の根幹です。


まとめ

この記事のまとめ
「土」=「岩石が風化した砂や粘土」+「動植物の死がい」×「微生物・菌類の働き」
土は、①岩石(地質)・②地形・③気候・④生物・⑤時間という5つの環境条件によって変化する
土を生かすのは、微生物・菌類の働き
大切なのは野菜が気持ちよく育つためのコミュニケーションとサポート

花光農園さんの「自然が本来持っている力を引き出す」という考え方は、私たちカイケンコーポレーションのものづくりの考え方と同じです。
木にストレスを与えず、気持ちのいい環境で余分な水分だけを抜いた「音響熟成木材」は「生きている木材」でもあることから、花光農園さんの「生きている土による野菜づくり」に生かしていただくことになりました。
次回は、花光農園さんの「畑をまるごと堆肥にする」という農法と、そこに「音響熟成木材」がどのように生かされているのか、ご紹介します。
こちらもぜひご一読ください。

カイケンコーポレーション株式会社
浦上 日章
うらかみ にっしょう
年熊本県上天草市生まれ。有明海と八代海にひらけた晴れやかな自然が美しい島で育つ。
2004年、カイケンコーポレーション株式会社設立に伴い専務取締役に就任。2023年7月、同代表取締役。
企業理念「地球環境蘇生」のもと、共感とご縁のある方々と力を合わせ、自然の恵みをよりよく未来へ繋げるよう、一歩一歩前進中。

