お知らせ
SAiN
2025/06/30
【Featuring SAiN85[施主様からの特別寄稿]四季めぐる空気がうまい家】ミリ単位の世界と直角 ~ど素人のちょっとした楽しみ~

5月には、真夏日となる日も多かったのですが、6月上旬は、なんだか例年より涼しかったような気がします。
それでも、昨年の暑さがあまりにも強烈だったので、春先のうちに、庭の手入れを済ませておきました。
同時に、5月下旬あたりから、夏の暑さを少しでも和らげる挑戦を開始することにしました。
この挑戦が、難しいのですが、意外と面白いのです。
暑さをしのぐプランとは?
我が家をリノベーションしたのは、16年前。
とにかく、シックハウス・化学物質に苦しむ次男の生活をなんとかしたいという想いで、音響熟成木材・幻の漆喰でリノベーションをお願いしました。
予算も限られていたために、アルミサッシ・シングルガラスの窓は残されたままの施工となり、現在も残っています。
そんな我が家も、2年前「先進的窓リノベ」という環境省が助成金を出してくれる制度を利用して、特に大きな窓(5か所)に内窓をつけてみました。
理想は、全ての窓に内窓をつけることでしたが、高額になってしまうために、限定して施工をしていただきました。
それでも、
「冬でも快適だなぁ」
と改めて感じることができたために、少しずつですが、内窓を作ってみることにしました。家中の全ての窓に内窓がつけられると、その効果は、かなり大きくなるだろうと信じて・・・。
素人ですが、
「失敗したとしても何か新しい発見があるかもね」
そんな軽い気持ちで、作業を進めることにしました。
例えば、560ミリでカットするということ
こうしたことを思いつくと面白いもので、今までスーパーなどのガラスや窓なんて意識して見たことも無かったのに、いろいろな窓が目につくようになりました。
もちろん、障子や襖だって眺めるのが楽しくなってきたのです。
いろいろなものを観察した後には、頭の中では十分にイメージができ、簡単な図面も作ってみました。
そして、作業を開始するのですが、ここで大きな疑問にぶつかってしまいました。
例えば、木材を560ミリでカットしたいとします。もちろん、木材に印をつけるのですが、印にも太さがあるということです。
極端に描くと、図の様になっており、どこをカットしていいものか、悩んだものです。実際に木材をカットしてみて、窓枠に入れようと思っても一ミリにも満たない誤差で入らないということもありました。

木材が大きくて入らないのであればいいのですが、数ミリ足りないとなると、悔しさが込み上げてきます。
「560ミリに木材をカットする」
言葉で言うのも、頭の中でイメージするのもとても簡単なことですが、実際にはそうは行かないものです。
頭の中では分かっているけれども
内窓を作るには、木材をカットする作業の他に、溝を掘る必要もあります。
決められた位置に工具で掘ればいいのですが、予定通りに彫ったけれども、窓が溝に綺麗にはまらないということも出てきました。
「なぜ?計算通りに彫ったのに…」
「あと、0.5ミリくらい溝が広ければ…」
なんてことも何度もありました。
そうなると、ほんの少し溝を広げて調整をするしかありませんが、こうなってしまった原因は何でしょうか。
改めて、木材をよく見ると、ほんの少しですが、木材が反っていることが分かりました。
「こりゃ、思った通りにいかないわ。」
なんでもないようなことですが、決められた位置できちんとカットする・90度を正確に出す。この難しさを改めて感じたのです。
こんなことは、素人の私には、想定できなかったことで、頭の中にあるイメージと実際のギャップを思い知らされたのです。

決められた作業は機械が得意なはず
こうした作業をしてみると、何気なく日々使っている窓はもちろん、クローゼットの扉などの正確さに感心するばかりです。
もちろん、現代のこうした製品のほとんどは、機械が生産していますが、今は機械に対しても、
「正確に同じものをいくつも造り続けるって偉いなぁ」
としみじみ感じています。さらに家全体を歪みなく作り上げていく大工さんの技術は、もはや神の領域の様な気がしてなりません。
今、時代は大きく動き、「AIを活用して効率的に!」なんて言われることも多くなってきました。
もちろん、私もAIを活用することもあり、大変便利になったなぁと感じることも多いのですが、スタートから一気に無難な答えに辿り着いてしまうので、新しい発見をする機会が減ってしまうような気がするのです。
本当の意味で、暮らしを楽しむというのは、「想定外のこと」に出会うことじゃないかなぁと思いながら、隙間時間に少しずつ作業を続けています。
AIに「夏の暑さをしのぐ方法を教えて」と言っても、きっと「内窓を作ったらいい」なんて答えてくれないでしょう。
AIにとっても「想定外だなぁ」と思える様なことを考えてみるのも面白いような気がします。


京都府宇治市 渋谷浩一郎
◎渋谷さんの自然についてのコラムは下記でもお読みいただけます
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