お知らせ
SAiN
2026/09/30
【Featuring SAiN90[施主様からの特別寄稿]四季めぐる空気がうまい家】太陽の熱を、からだの温もりに〜夏の暑さを味方にする、私の干し仕事〜
不思議なもので、夕方になり、32℃くらいで落ち着いていると「なんだか涼しくなったなぁ」と感じます。
京都は特に湿度も気温も高くなりがちなので、32℃でも涼しく感じるのでしょう。
ちょっと、ランニングをしてもいいかなぁなんて思ってしまいますが、よく考えたら32℃だって十分な暑さです。
真夏が始まったばかりの頃なら「外に出るのも危険」と警戒していたはずの気温なのに、体がすっかりこの暑さに慣れてしまったのでしょう。
人間の暑さに対する順応力というか、環境に適応する能力の高さには、つくづく感心させられます。
この夏の暑さを冬に持ち込む?
そうは言っても、昼間は、三十七度の日々が続いていました。
ニュースでも「十分に注意しましょう」と盛んに言われていましたが、この強烈な太陽の熱を、ただ避けるだけの「敵」にしておくのは、なんだかもったいない。
できることなら、この暑さの恩恵を冬に持ち込むことはできないだろうか? そんなことも考えて過ごしたものです。
まず取りかかったのは、夏の風物詩である梅干しの「土用干し」でした。
ザルの上に一粒ずつ並んだ梅たちが、お日様の力強い日差しを浴びてふっくらと赤く、そして愛らしいシワを寄せながら仕上がっていく姿。
じりじりと肌を焦がすような猛暑が、美味しい梅干しを育てるための「最高の天然乾燥機」に思えてくるから不思議です。お日様のエネルギーが、そのまま一粒の酸っぱさに凝縮されていく過程は、見ているだけで元気をもらえます。
また、しっかりと太陽に当てた梅干しは、いつまで経っても柔らかいままです。
もちろん、冬になっても柔らかいままです。
こう考えると、梅干しは「夏の太陽の恩恵を冬にでも受けられるもの」として見ていいのかもしれません。
夏でも身体の冷えはダメ?
いろいろな所で「身体の冷えは良くない」と言われますが、これだけ暑い日々が続けば、「身体が冷えていた方が快適じゃないの?」なんて思ったこともあります。
ところが、先日、寒いくらいエアコンの効いた部屋で三時間ほど過ごさないといけない機会があり、「身体の冷えは良くない」どころか、変な疲労感が出てくることを身をもって体験しました。
そんなこともあって、身体を冷やさないアイディアを考えてみました。
それが、「蒸し干し生姜」です。
生姜は冷えに良いことで知られますが、食べ方によって効果が変わります。
生の生姜は手足の血管を広げて、血行がよくなるので、生姜を食べた直後には温かく感じますが、そのあとは、熱を放熱させるために深部体温を下げてしまうために、冷えの原因になってしまうこともあるようです。
ところが、一度「蒸してから、干す」という手間を加えることで、身体を芯から温めて冷えにくくする成分がぐんと高まるそうです。
早速、新生姜を蒸していきましょう。
蒸し始めると、キッチンにピリッと甘く、どこか懐かしい香りが広がります。
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20分ほど蒸すと、太陽の光にさらします。
何もない日には、京都の蒸し暑さとギラギラした容赦のない直射日光は、邪魔なはずなのに、この日ばかりは、恵みの太陽と感じられるのが不思議なものです。
時間と共に、太陽の熱をぎゅっと閉じ込めるように、みるみる小さく乾いていく生姜たち。
こうして、暑い夏だからこそ、その熱を借りて、冬まで使える「身体を温めるお守り」を仕込む。
この少し矛盾するようなやりとりが、たまらなく愛おしく、楽しい時間になりました。


毎日の新習慣で・・・
完成した琥珀色の乾燥生姜をそのまま食べてみると衝撃でした。
こんなに生姜の味が濃厚になるなんて…。
私の場合は、お味噌汁に乾燥生姜をひとかけら入れるのが日課となりました。
もともと、冷えの体質ではありませんが、それでもこの新習慣を一週間もすれば、お味噌汁をいただいた後には、お腹の奥からじんわりと温まっていくのが感じられるようになりました。
家族も、「食後に身体がポカポカするようになってきた。」などと話していました。
ただ厳しいだけだと思っていた夏の暑さが、めぐりめぐって、私のからだを優しく温めて守ってくれる…。
自然のサイクルに上手に乗っかる心地よさを、一枚の生姜が教えてくれました。
「暑い、危険」とやり過ごす夏から、お日様を暮らしの恵みに変えていく夏を感じられた瞬間でした。
こうした知恵は、まだまだ私たちの身の回りにたくさん隠れているように思います。
ただ、ちょっと寂しいのは、生姜が随分小さくなってしまうこと。
ザルの上でカラカラと心地よい音を立てる生姜を見つめると、損をしたなぁという気持ちにもなってしまいますが、今も体は内側からポカポカしています。
この生活を続けると、冬も楽々乗り越えられそうな予感がします。

京都府宇治市 渋谷浩一郎
◎渋谷さんの自然についてのコラムは下記でもお読みいただけます
https://e-kaiken.com/natural-link-navi/