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SAiN

2025/12/26

【Featuring SAiN87[施主様からの特別寄稿]四季めぐる空気がうまい家】「物価高対策」としてのお寿司

「物価高」 決して嬉しい言葉ではありませんが、こうした言葉を聞く度に、少しでも工夫できることはないだろうか・・・。
なんて考える機会になります。

先日は、偶然、根っこまでしっかりと残された葱をスーパーで見つけたので、根本あたりだけを残して庭に植えておきました。
まだまだ、大きくは育っていませんが、新しい芽が出てきたので、安心すると同時に、葱がたくさん採れることをそっと妄想しています。

また、「物価高でも美味しいお寿司が食べたいなぁ」なんて思ったことをきっかけに、真面目にお寿司を握る練習を開始。
いざ、練習を始めてみると、知らなかったことにたくさん出会うことができました。


お寿司は保存食でファストフード?


そもそも、「お寿司は誰が考えたのだろう?」そんな事も気になりました。

その歴史は、想像以上に古く、紀元前までさかのぼるようです。
「たくさんとれた魚を保存したい」そんな願いから、魚を塩漬けにし、炊いたお米に漬けて乳酸発酵させたのが起源だと言われています。
当時は、贅沢にも漬け込みに使ったお米は捨てていたそうです。
これで、一つ謎が解けました。
滋賀県の鮒寿司。
ご飯がないけれども寿司と呼ばれる所以は、こういうことだったのです。

そして、江戸時代にもなると、発酵を待たず、かわりにご飯に酢をまぜて、「発酵させた気分」で食べる「早寿司」が人気となったそうです。
ただ、この頃は、現代でいう押し寿司の形だったそうです。
後に、屋台でも手軽にパッと食べられるファストフードとして、現代に近い「握り寿司」が誕生しましたが、一貫の大きさは、現代のものの二倍くらいの大きさだったようです。

そして、現代。
ファストフードの様に手軽に食べられるものから、もはや「芸術ではないか?」と思わせてくれるような美しく、上品なものまで、幅広く楽しめるようになりましたが、やはり、「美しく、上品なものが作れるようになりたい」なんて思ってしまったのです。


とりあえず握る練習から


こうした歴史的な背景が分かると、上手にできるか分からないけれども、ご飯だけでも握ってみることにしました。
誰も見ていないところで練習をするのも何だか最初は、ドキドキしたものです。

ご飯を目の前にして、何度も「素振り」の様なことをしてから、ご飯を手にとりました。
ところが、案の定、まったくイメージと違うご飯の塊ができてしまいました。
通常、シャリの重さは、一貫=10g程度と言われていますが、私が握ったものは、18g。
もはや「巨大にぎり」であって、気品なんてものは感じられない状態でした。

それからは、毎日、ご飯を10~11g手に納める練習を続けてみました。
パッと掴んでは計量、また掴んでは、計量・・・の繰り返しです。
練習する時間がとれなかった日も「一日休めば三日分衰える」こんな言葉を思い出しながら、最低でも二貫分は練習することにし、続けてみました。
二週間もすれば、およそ決まった量がとれるようになりましたので、驚きです。
人間の肌感覚は優れていると改めて感じた瞬間でした。


美しさは、ネタの切り方から


ご飯を握る練習ができるようになったので、「お揚げさん」で握り寿司のようなものを作ってみました。
ですが、なんとも無様です。
改めて、ネタの切り方がどれほど重要なのかを痛感しました。


最初はお魚の代わりにお揚げさんでした


調べてみると、職人さんは指を定規のように見立て、指三本分がネタの幅、四本分が縦の長さとしてネタを切るようです。
そして、ご飯(シャリ)の部分を包み込むように握るのが、綺麗に見えるコツだそうです。
身がしっかりとした魚では、ご飯を包み込むことができないために、飾り包丁を入れて、湾曲しやすいようにしているそうです。

ただし、私の様な素人が家庭用にと買うお刺身は少量であるため、お寿司に合った指三本×四本のネタは、そう多くはとれません。
ついつい、「もったいないし、大きさが足りないけどまぁいいか。」なんて思ってしまいますが、こう思った時のお寿司は、全く綺麗に作ることができません。

もちろん、切れ端もおいしくいただくのですが、切れ端ができるだけ出ない切り方をパズルの様に追求する必要がありそうです。


すだちと塩で半端なく美味しいクロダイ


職人さんの技


職人さんにとって、こうしたことは基本のようですが、改めて自分がこんなことに挑戦してみて、随分、昔にお寿司屋さんで、言われた言葉を思い出しました。

「魚によって油の量が違うだろ。分かりやすく言えば、大トロとコハダでは、油分が全く違う。だから大トロはシャリを多くしないと、くどくなってしまう。季節によっても油分が違うし、シャリの量はネタによって微妙に変えているんだ。」

こう言って、

「兄ちゃん、まだ若いから、トロなんか一人一貫も注文したらお代が高くなるやろ。二人でいるなら一貫を二つに分けたらいいやん。」

と、綺麗な一貫を目の前で縦に包丁を入れて二貫にしてくれたのです。

魚の種類、季節によってご飯の量を微妙に変化させる。それも、凄い職人技ですが、二十代の若造が、トロを注文した懐事情まで察して、ユーモアにしてしまう・・・。
こうした、全てが相まって、美味しさが生まれるのだと思います。

今日も、少しばかり練習をしましたが、結局、より美味しいものを作りたいと思い、おひつ・銅のフライパンも買ってしまったので、物価高対策になっていないっていうことは、ここだけの話にしておきます。


柚子果汁と酢で〆て飾り包丁を入れて握った、美しく美味しいカマス




京都府宇治市 渋谷浩一郎

◎写真はすべて渋谷さんが握られたお寿司です!
 いろんな意味で物価高対策を凌駕する出来栄えです
◎渋谷さんの自然についてのコラムは下記でもお読みいただけます
 https://e-kaiken.com/natural-link-navi/