カイケンコーポレーション

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Special Feature 2022 WINTER

LIFE WITH WOOD 木と人の暮らし

世界篇

前号のSAiNで特集した「木と人の暮らし」。
今回はその第2回目として、視野を世界に広げ、
木と人の暮らしとのかかわりを考えてみます。

メキシコ・オアハカ州の「アレブリヘス」と呼ばれる木彫りのフォークアート(伝統工芸品)。空想の生き物などがモチーフになっています。

LIFE WITH WOOD 木と人の暮らし

木と祈る

日本のあちこちにお寺や神社があるように、ヨーロッパでは至るところに教会があります。
二千年の歴史をもつといわれるキリスト教の教会建築の基礎となったバシリカ様式は、木の梁と柱による木造軸組工法でした。
日本現存最古の木造教会は国宝の大浦天主堂ですが、世界現存最古は、ノルウェーのウルネス木造教会とのこと。
世界各地の風土に根ざした木造教会は、厳かな祈りの空間であるとともに、地域の風景の一部になっています。

上の写真は中世に建てられたノルウェーの伝統的なスターヴ教会。「スターヴ」とは、太い木の支柱のこと。現存する最古のスターヴ教会も世界遺産に登録。「アナと雪の女王」に登場するお城のモデルになったともいわれています。

他2点の写真は世界遺産に登録されているチリ南部チロエ島の木造教会群。17〜18世紀にかけて宣教で訪れたカトリックのイエズス会士たちによって、多くの木造教会が建てられました。

木に憩う

木は生き物ですから、ひとつとして同じものはありません。
だからこそ、木造の建物のそれぞれにぬくもりや親しみやすさが感じられ、心も体もととのう、リラックスした時間を過ごすことができるのだと思います。
大きな木の木陰こそ、憩いの場所の原点なのかもしれませんね。

モンゴル高原の遊牧民たちの伝統的な移動式住居「ゲル」。木組の技術がいかされています。

フランス北東部ストラスブールの木組の家と、アルプスの山小屋。ライン川を挟みドイツと国境を接するストラスブールの建築は、両国の文化が融合しています。

木で興ずる

舞や踊りのときにつけるお面や、人形劇に使う操り人形など、世界各地のお祭りやカーニバルの余興にも木製品がよく使われます。
木を用いた手作りの品々に独特の愛嬌が生まれてくるのは、「人を楽しませたい」という作り手の心が伝わるからなのでしょう。

韓国の木製お面。「ハフェタル」というお面は、東洋一古いお面ともいわれ、縁起物として壁に飾ったりもするようです。

ヒンドゥー教の神々に由来するものが多いネパールの民芸品でハンドメイドの操り人形と、北アフリカのチュニジアの手作り木製人形。

木で燻す

木は薪や木炭になり、燃料として私たちの暮らしを支えてくれるだけでなく、その「煙」で、美味しい保存食も生み出してくれます。
スコットランドのスモークサーモン、アメリカのビーフジャーキーやスモークBBQ、ドイツの燻製ハムなど、世界各地で多種多様な燻製・スモークが、木の燻煙から生み出されています。

フィンランドのスモークサーモンと、ドイツの田舎道の脇に積まれた薪。燻製には香りのいいサクラ、ブナ、おがくず、ヒッコリーなどの木が使われます。

木に刻む

北米大陸の太平洋岸に暮らす先住民固有の文化であるトーテムポール。「トーテム」は、特定の部族・家族や血縁・血統に宗教的に結びつけられた野生動物や植物などの象徴をあらわします。
先住民たちは柔らかく加工しやすいレッドシダーを使ったトーテムポールに、自分たちの出自、身に起こった出来事、功績などを刻み、部族の物語を次世代へ伝え受け継いでいきました。
私たちも、木とともにある暮らしを大切に育んでいきたいですね。

世界で最も美しい公園のひとつといわれるカナダ・バンクーバーのスタンレーパークにある先住民たちのトーテムポールのレプリカ。