人間が誕生する遥か昔から、木は生きていました。
私たちの暮らしは、木からたくさんの恩恵を受けて地域ごとの文化を生み出し、今に続いています。
今回の特集では、木と人の暮らしとのかかわりをあらためて考えてみたいと思います。
木を敬う
神社の「御神木」のように、私たちは古来から巨木や古木などの木に畏敬の念をいだいてきました。
木に対する信仰は世界中にあって、世界が一本の大樹で成り立っているという「世界樹」の神話や民話は、インド、北欧、シベリア、メソアメリカなどに伝わっています。
お住まいの地域の神社やお寺にも、風格のある名木がありませんか?
木で遊ぶ
「あらゆる文化は遊びから生まれた」(歴史学者ヨハン・ホイジンガ)という言葉があります。 独楽、けん玉、将棋、積み木・・・どれも簡素で奥が深い木の遊び道具は、人間の原始的な「遊び心」を思い起こさせてくれます。
木を奏でる
木は効率良く音(振動)を伝える性質と音を和らげる性質があるそうで、いろいろな楽器はもちろん、コンサートホールやオーディオのスピーカーにも木が使われます。人の心を潤す音楽にも、木は欠かせませんね。
木を用いる
約200万年前、人類が初めて用いた道具は石器でした。やがて石器は進化し、木を伐ったり削ったりできるようになって、木を用いた様々なものが生み出されていきました。
歴史ある木造建築などを見ると、古代の人が木の特性をとてもよく知っていたことが分かります。用途に合わせた木の選び方や使い方は、昔の人たちの知恵と工夫の結晶ですね。
ちなみに、「樽」にはフタがあり、水分が染み出しにくい、山の形のような曲線紋様がある「板目(いため)」の板が使われます。「桶」にはフタがなく、吸水性の高い、平行な紋様がある「柾目(まさめ)」の板が使われます。
木に託す
およそ一四〇〇年の歴史を持ち、現存する世界最古の木造建築物として名高い法隆寺をはじめ、出雲大社や伊勢神宮など、日本には数多くの歴史ある木造の神社仏閣があり、仏像があります。
そんな寺社の空間や仏像の前にたたずむと、いにしえの宮大工や仏師たちが木に託した祈りの心が、時代を超えて伝わってくるようです。
木をいかす
木を使ったものづくりは、民芸品や郷土玩具など、地域の風土や生活の中で育まれてきました。その品々には、手仕事のぬくもりがあり、人の心の素朴な優しさが感じられます。
木は、生きもの。古材を削ると、時を経た柔らかな木の香りが立つように、森から伐り出されて木材になっても、木の命は生きています。
木を大切に、木と共にある暮らしを楽しんでいただければと思います。