場所や気分などで、時間のながれが違うように感じることがありませんか?
        実際に、ほんのわずかの差ですが、時間は高地で速く、低地で遅くなるそうです。
        宇宙や自然界と人間とでは、時間のスケールが違いますし、生物や植物の間でも、それぞれの時間軸があります。
        今回のSAiN特集では、今この世界に存在する、異なるいくつもの「時間」へとご案内します。
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          果てしない時間といえば、宇宙の時間。 
 最新の研究では、ビッグバンからはじまる「宇宙の年齢」は、138億年だそうです。
 ちなみに、地球から北極星までの距離は430光年。
 私たちが「今」見ているのは、北極星から「430年前」に放たれた光です。
 時間の不思議は、今夜も夜空に広がっています。
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          世界遺産にも登録されている岐阜県白川郷(白川村)の合掌造りの家屋。 
 古いものでは築300年にもなるそうです。
 「日本の原風景」ともいわれる白川郷の美しい景観は、現代のスクラップ&ビルドと対極をなすサステナビリティのお手本でもあり、本来あるべき人の暮らしの営みの、懐かしい時間のながれが維持されています。
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          夕暮れから強い香りを出し始め、夜に見事な花を咲かせ、朝には色も香りも失って、その後は二度と花開くことはない「月下美人」。 
 花の寿命は一夜限りですが、その魅惑的な芳香と美しさは、儚くも濃密な命の時間です。
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          オーストラリア大陸の先住民族、アボリジニは、先祖たちの神話の時代を「夢の時代/ドリームタイム」と呼び、万物の起源を歌にしながら大陸を旅して、独自の世界観を創造(=ドリーミング)していきました。 
 その足跡は「歌の道/ソングライン」といわれ、はるかな時を超えて今も夢の時代へといざなってくれます。
 ◎写真:アボリジニが約2万年前から利用してきたとされるノーランジーロックの洞窟内部の壁画
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          ドイツの金細工師グーテンベルクが活版印刷術を発明した1450年頃以来、多くの書物が時と場所を超えて流通するようになりました。 
 今、本に限らず、絵画、音楽、映画など様々なアートの中にながれる時間と出会うことができます。
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          昆虫は、成長の過程で姿を変えるメタモルフォーゼ(変態)を行います。 
 幼虫と成虫で姿を一新するその一生は、「2つの異なる生の時間を生きている」といえるのかもしれません。
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          「鶴は千年、亀は万年」といわれますが、実際は、鶴の寿命は20〜30年、亀の寿命は一般的な種類で30〜50年ですが、リクガメなど100年を超える種類もいます。 
 そういえば、亀が活躍する『浦島太郎』は、「時間」にかかわる物語でした。
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          木は、私たち人間とは異なる時間軸を生きる、最も身近なもののひとつです。 
 日本が原産地の杉の寿命はおよそ1000年といわれ、鹿児島県の屋久島に生きる屋久杉は、樹齢2000年を越えます。
 老大木は古くから神聖視され、寺社仏閣の御神木として信仰の対象になっています。
 ◎写真:「縄文杉」と呼ばれる屋久杉最大級の老大木
よくよく考えてみると「時間」とは、ほんとうに不思議なものです。
        最新の物理学では、時間は人間が生み出すものでしかなく、実際には存在していない…という理論もあるようです。
        それはそれとして、日々の暮らしの中で、私たちとは時間軸が異なる自然や生き物に接したり、本や映画の物語の時間を楽しんだりして、今を生きる時間をより豊かなものにしていただければと思います。
