お知らせ
SAiN
2023/01/06
【Featuring SAiN75[施主様からの特別寄稿]四季めぐる空気がうまい家】卵の知恵とおいしいスープ
穏やかだった秋の終わりは、急激にやってきた様に感じます。それと同時に、再びコロナが流行し始めました。コロナの広がりを抑えるために、私たちはマスクを着用し、手洗い・うがいなどの注意をしてきました。また、ワクチンや飲み薬も活用されてきましたが、終焉を迎えたとは言いにくい状況です。
この様な状態は、決して「良い状態」とは言えませんが、もう少し、長い目で見ると、現在生きている人や動物・植物は、「これまでに何度もこの様な危機的な状態を乗り越えて来た凄い力をもっている」とも言えそうです。
先日、お料理が大好きな知人から、卵白を使った面白いアク取りの方法を教わりました。ですから、今日は、鶏ガラスープでもとりながら、卵がもっている凄い力に迫りたいと思います。
こんな話を通して、今、元気に過ごせていることがどんなに素晴らしいことなのか改めて実感していただけると嬉しいです。
卵の黄身は宙に浮いている
祖父の家の縁側の床下には、鶏が十羽ほどいました。幼い頃、ひとしきり遊んだ後に「お腹が空いた」なんて言うと、「縁側の床をめくって卵があれば食べていいよ。」なんて言われたものです。
祖父によると、卵を割らずに、小さな穴を空けて、そこにお醤油を少し垂らして、ストローを刺して食すのがイキらしいのです。そう言われるとやってみたくなり、挑戦してみたことがあります。ところが、結果は、不味かったのです。
今思えば、自由に庭も縁側の下も行き来していた元気な鶏の卵ですから、不味い筈がないのですが…。
実は、その不味さの原因は、卵自身の問題ではなく、私の混ぜ方に問題があったのです。ストローをパッと刺して、数回混ぜたくらいでは、白身と黄身がほとんど混ざらず、私は先に白身ばかりを吸い、最後に黄身ばかりを吸っていたために、全く美味しくなかったのです。
ただ、この時に、卵の黄身は、簡単に壊されないように白身で守られていることを痛感することができました。しかも、卵の中の世界では、黄身は見事に宙に浮いて、外部からの衝撃にも耐えられるようにしているのです。
こんなことを鶏が一生懸命考えたのではなく、当然のこととしてやって生命を繋いできたのです。
そして、私たちは、壊れやすいお豆腐を守るためにも卵と同じ仕組みを利用させてもらっているのです。
卵白は病気もやっつける
こうして「卵白は生命を守るもの」という見方をすると、新たな発見をすることができます。先にも触れた様に、卵白は卵黄を衝撃から守る役割を果たしていると同時に、細菌の感染を防ぐ役割も果たしています。
簡単に言えば、卵白は、卵の外部から侵入してきた細菌の壁を溶かす成分をもっていたり、鉄分を強く引きつける成分をもっていたりします。鉄分を引きつけることで、菌の繁殖を抑えるなんていうこともしているようです。
当然と言えば、当然のことですが、鶏に限らず全ての生命は、命を守るために私たちの知らないところで、驚くような工夫をしているのです。まだまだ、解明されていない工夫もきっとたくさんあるんじゃないかなぁと思います。
今を生きる私たちの身体にもきっとこんな工夫が計り知れないほど隠されているはずです。こんなことをふと考えると、時々、身体の声を聞いてあげる時間は、とても大切なことだと思うのです。
卵白をつかった鶏ガラスープのアク取り方法
卵白は、外敵から身を守るための工夫が詰まったものでした。
また、加熱をすると、凝固するのですが、この時に余計なものを巻き込みながら凝固するために、徹底的にアク取りをするのに活用できるそうです。
1
鶏ガラなどの材料を鍋に入れて煮立たせる。
今回は、「鶏ガラ・昆布・にんじん・しょうが・ねぎ」を入れて煮込みました。
2
アクが浮いてきたら、卵白を静かに入れます。
しばらくすると、少しずつ卵白が固まっていきます。
3
卵白入りの鶏ガラをこしていきます。
4
こしたスープに再び、鶏ガラをだけを戻して、再び2時間ほど煮込みます。
この時、鶏ガラに付着した卵白は取り除いておきます。
5
十分に煮込んだら、綺麗なスープの完成です。
鶏ガラスープにお醤油を少しいれてみました。
雑味のない美味しいスープができました。
お料理店などでは、こうして完璧にアクを取り除くこともあるそうですが、一体、誰がこんな方法を考えたのでしょう。卵白は雑味を取り除いてくれますが、旨味はきちんと残してくれるなんて、実に見事です。
自然の中にあるものって、工夫次第で想像以上の働きをしてくれるんだと感じた瞬間でした。今、庭のネギも寒さに耐えて暮らしていますが、彼らの身体の中にも寒さに耐える秘訣が隠されているんじゃないかなぁと思います。
京都府宇治市 渋谷浩一郎
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